Japanische Klassiker mit Furigana
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はるのまぼろし
春の幻
豊島 与志雄
Lesen Sie 春の幻 (はるのまぼろし) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 2.888 Zeichen · 6 Bildschirme
息苦しい陶酔が地上を支配する。自分の舞に眼の眩んでる蝶が、物狂わしく行方に迷っている。自分の声に魅せられてる小鳥が、喉の裂けるまで囀り交わしている。そして今、それらのものをのせた大地の肌が、種子の芽ぐみ卵の孵る温気にじっとりと汗ばんで、間を切って息している。息と汗の蒸気とがもつれ合って、ゆらゆらと陽炎の立つ片隅に、まだ背肌の乾ききらない蛇が、淫蕩なとぐろを巻いている。叢の影から、蛙が大きな目玉をむいている。朽葉の上には、蛞蝓が鈍銀の粘液をぬたくりながら、匐いだしかねて角を潜めている。彼等は――蛇と蛙と蛞蝓とは、互の恐怖から悚んでるのではない。無関心な眼で互に眺めながら、自分自分の猥らな思いに、うっとりと考え込んでいる。そしてそのまわりを、紺青に金線のある蜥蜴が、ひょいひょいと頭をもたげては、また小足にすばしっこく馳け続ける。やがて彼は喉が渇いて、顎をぴくぴくさせながら、池の水を飲みに行く。池の中には、泥にしっかと四足を踏み込んだ大きな牝蝦蟇の背中に、幾匹もの牡蝦蟇が群がって、執拗な争いのうちに絡みあっている。気を失った牝蝦蟇は、なお背中に一二の牡からしがみつかれたまま、臍のない太鼓腹を上にして、ぽかりと水面に浮んでくる。