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Japanische Klassiker mit Furigana

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はるのとうぞく

春の盗賊

太宰 治

Lesen Sie 春の盗賊 (はるのとうぞく) von Dazai Osamu (太宰 治) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 29.212 Zeichen · 58 Bildschirme

Aozora Bunko

どろぼう! どろぼうである。どろぼうだ。いまは、疑う余地がない。私は、告白する。私は、気が遠くなりかけた。呼吸も、できぬくらいに、はっと一瞬おどろきの姿勢のままで、そのまま凝固し、定着してしまったのである。指一本うごかせない。棕櫚の葉の如く、両手の指を、ぱっとひろげたまま、活人形のように、ガラス玉の眼を一ぱいに見はったきり、そよとも動かぬ。極度の恐怖感は、たしかに、突風の如き情慾を巻き起させる。それに、ちがいない。恐怖感と、情慾とは、もともと姉妹の間柄であるらしい。どうも、そうらしい。私は、そいつにやられた。ふらふら立ち上って、雨戸に近寄り、矢庭にその手を、私の両手でひたと包み、しかも、心をこめて握りしめちゃった。つづいて、その手に頬ずりしたい夢中の衝動が巻き起って、流石に、それは制御した。握りしめて居るうちに、雨戸の外で、かぼそい、蚊の泣くようなあわれな声がして、

「おゆるし下さい。」

私は、突然、私の勝利を意識した。気がついてみると、私が、勝っていたのである。私は、どろぼうを手づかみにした。そう思ったら、それと同時に、くるくる眩暈がはじまって、何か自分が、おそろしい大豪傑にでもなってしまったかのような、たいへんな錯覚が生じたのである。