Japanische Klassiker mit Furigana
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ぎゃっこう
晩年
Lesen Sie 晩年 (ぎゃっこう) von Dazai Osamu (太宰 治) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 44.459 Zeichen · 91 Bildschirme
くろんぼの檻が、ふたりの男に押されて舞台へ出た。檻の底に車輪の脚がついているらしくからからと音たてて舞台へ滑り出たのである。頬被りしたお客たちの怒号と拍手。少年は、ものうげに眉をあげて檻の中をしずかに観察しはじめた。
少年は、せせら笑いの影を顔から消した。刺繍は日の丸の旗であったのだ。少年の心臓は、とくとくと幽かな音たてて鳴りはじめた。兵隊やそのほか兵隊に似かよったような概念のためではない。くろんぼが少年をあざむかなかったからである。ほんとうに刺繍をしていたのだ。日の丸の刺繍は簡単であるから、闇のなかで手さぐりしながらでもできるのだ。ありがたい。このくろんぼは正直者だ。
やがて、燕尾服を着た仁丹の鬚のある太夫が、お客に彼女のあらましの来歴を告げて、それから、ケルリ、ケルリ、と檻に向って二声叫び、右手のむちを小粋に振った。むちの音が少年の胸を鋭くつき刺した。太夫に嫉妬を感じたのである。くろんぼは、立ちあがった。
むちの音におびやかされつつ、くろんぼはのろくさと二つ三つの芸をした。それは卑猥の芸であった。少年を置いてほかのお客たちはそれを知らぬのだ。