Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ちえこのはんしょう

智恵子の半生

高村 光太郎

Lesen Sie 智恵子の半生 (ちえこのはんしょう) von 高村 光太郎 (たかむらこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.697 Zeichen · 25 Bildschirme

Aozora Bunko

あれほど熱愛して生涯の仕事と思っていた自己の芸術に絶望する事はそう容易な心事である筈がない。後年服毒した夜には、隣室に千疋屋から買って来たばかりの果物籠が静物風に配置され、画架には新らしい画布が立てかけられてあった。私はそれを見て胸をつかれた。慟哭したくなった。

彼女はやさしかったが勝気であったので、どんな事でも自分一人の胸に収めて唯黙って進んだ。そして自己の最高の能力をつねに物に傾注した。芸術に関する事は素より、一般教養のこと、精神上の諸問題についても突きつめるだけつきつめて考えて、曖昧をゆるさず、妥協を卑しんだ。いわば四六時中張りきっていた弦のようなもので、その極度の緊張に堪えられずして脳細胞が破れたのである。精根つきて倒れたのである。彼女の此の内部生活の清浄さに私は幾度浄められる思をしたか知れない。彼女にくらべると私は実に茫漠として濁っている事を感じた。彼女の眼を見ているだけで私は百の教訓以上のものを感得するのが常であった。彼女の眼には確かに阿多多羅山の山の上に出ている天空があった。私は彼女の胸像を作る時この眼の及び難い事を痛感して自分の汚なさを恥じた。