Japanische Klassiker mit Furigana
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ちえこのはんしょう
智恵子の半生
高村 光太郎
Lesen Sie 智恵子の半生 (ちえこのはんしょう) von 高村 光太郎 (たかむらこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.697 Zeichen · 25 Bildschirme
私が彼女に初めて打たれたのも此の異常な性格の美しさであった。言うことが出来れば彼女はすべて異常なのであった。私が「樹下の二人」という詩の中で、
ここがあなたの生れたふるさと
この不思議な別箇の肉身を生んだ天地。
と歌ったのも此の実感から来ているのであった。彼女が一歩ずつ最後の破綻に近づいて行ったのか、病気が螺旋のようにぎりぎりと間違なく押し進んで来たのか、最後に近くなってからはじめて私も何だか変なのではないかとそれとなく気がつくようになったのであって、それまでは彼女の精神状態などについて露ほどの疑も抱いてはいなかった。つまり彼女は異常ではあったが、異状ではなかったのである。はじめて異状を感じたのは彼女の更年期が迫って来た頃の事である。
追憶の中の彼女をここに簡単に書きとめて置こう。
前述の通り長沼智恵子を私に紹介したのは女子大の先輩柳八重子女史であった。女史は私の紐育時代からの友人であった画家柳敬助君の夫人で当時桜楓会の仕事をして居られた。明治四十四年の頃である。私は明治四十二年七月にフランスから帰って来て、父の家の庭にあった隠居所の屋根に孔をあけてアトリエ代りにし、そこで彫刻や油絵を盛んに勉強していた。