Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ちえこのはんしょう

智恵子の半生

高村 光太郎

Lesen Sie 智恵子の半生 (ちえこのはんしょう) von 高村 光太郎 (たかむらこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.697 Zeichen · 25 Bildschirme

Aozora Bunko

それは神の愛である事もあろう。大君の愛である事もあろう。又実に一人の女性の底ぬけの純愛である事があるのである。自分の作ったものを熱愛の眼を以て見てくれる一人の人があるという意識ほど、美術家にとって力となるものはない。作りたいものを必ず作り上げる潜力となるものはない。製作の結果は或は万人の為のものともなることがあろう。けれども製作するものの心はその一人の人に見てもらいたいだけで既に一ぱいなのが常である。私はそういう人を妻の智恵子に持っていた。その智恵子が死んでしまった当座の空虚感はそれ故殆ど無の世界に等しかった。作りたいものは山ほどあっても作る気になれなかった。見てくれる熱愛の眼が此世にもう絶えて無い事を知っているからである。そういう幾箇月の苦闘の後、或る偶然の事から満月の夜に、智恵子はその個的存在を失う事によって却て私にとっては普遍的存在となったのである事を痛感し、それ以来智恵子の息吹を常に身近かに感ずる事が出来、言わば彼女は私と偕にある者となり、私にとっての永遠なるものであるという実感の方が強くなった。私はそうして平静と心の健康とを取り戻し、仕事の張合がもう一度出て来た。