Japanische Klassiker mit Furigana
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ダーク・ミニスター
暗黒公使
夢野 久作
Lesen Sie 暗黒公使 (ダーク・ミニスター) von 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 214.561 Zeichen · 420 Bildschirme
そのハンカチの棒のように絞り固めた中心の方はまだ薄じめりしているらしく、外側の捩じれた皺の上には、今まで入っていたポケットの内側の染料が赤く波形に染み付いていた。鼻に当てて嗅いでみるとウイスキーと珈琲との交った臭気がぷんとしている。これは多分ウイスキー入りの珈琲がこぼれたのを拭いたもので、ポケットの内側の色が染み付いたのは多分アルコールの作用であろうと思いながら、念のためにポケットの内側を覗いてみると、それは赤い色ではなく、他の処と同様に鉄色の繻子であった。そうしてその奥底の方のハンカチの潤いを吸うた部分だけがハッキリとした赤黄色に変色しているのであった。
私はそのハンカチを持ったまま、衆人環視の中をつかつかと、窓の処に近づいて行った。そうして出来るだけ方々に指を触れないようにそのハンカチを引き拡げて、隅の両端を摘んで、皺を伸ばすために二つ三つはたくと、粘り付いていた煙草の粉が皆飛んでしまった。それを間もなく照り出した日の光りに透かしてみると、半乾きのハンカチの繊維が皆、真白に輝いて見えた。
ハンカチの向うの広場には、電車や、人力車や、自動車や、自転車が引っきりなしに音を立てて通った。