Japanische Klassiker mit Furigana
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こよみ
暦
壺井 栄
Lesen Sie 暦 (こよみ) von 壺井 栄 (つぼいさかえ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 56.332 Zeichen · 112 Bildschirme
ある日のお昼前、船の売手と、それを仲介した船大工がいっしょにやってきた。八十円と今までの持船を添えて交換ということで三人の男たちは土間に立って手打ちをした。しゃんしゃんしゃんと打つ掌の音が何か子供のふざけ事のように楽しく響くのをかやもいねも嬉しげに眺め、いねは一升徳利を持って酒屋へ走った。船はいろいろ造作を加えられて、ある日の夕方、潮の満ち始めを見計って家の下の浜まで回されてきた。明日から一家のかてを得るための新しい使命を担って船は家族の一員のように迎えられた。古船とはいえ、きれいに洗い磨かれていて帆柱の先には、日向丸と藍地に白ぬきの小さい旗がはためいていた。船乗りは心配だといい暮して職人に仕込んだ重吉が、別に職人を嫌ってでもないのにまるで前世からの約束事ででもあるように父親甚作の仕事を継いでしまったことは余儀ない回り合せとはいえ、かやにとっては不思議な運命とより思えなかった。しかも甚作のようにほかに乗組員があるというでなく、一丁の艪と風まかせの帆をあやつっての一人旅であるからには、甚作の場合よりもっと大きい不安が伴うわけであるが、かやは別にそれを口に出して悔みもしなかった。