Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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こよみ

暦

壺井 栄

Lesen Sie 暦 (こよみ) von 壺井 栄 (つぼいさかえ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 56.332 Zeichen · 112 Bildschirme

Aozora Bunko

商人のように羽織など着て、でっぷりと貫禄のできている正太郎を、重吉は息子が戻ってでもきたような顔で迎えた。こうして道具箱のそばで、親方、と呼びかけられるのは何十年ぶりのことであった。正太郎は恩返しに親方を会社へ雇いに来たのだといった。船をやめて桶屋をやるくらいなら、会社へ来れば仕事はそうしなくても親方一人ぐらいは――と何べんもすすめられたが、重吉は笑って取り合わなかった。正太郎が帰ったあとで、

「あいつは何事にも目はしの利く奴じゃったが」と感慨深くいった。今でも重吉の手塩にかけられた弟子たちは、毎年鏡餅をもって歳暮の挨拶に来る。その中で正太郎の鏡餅は臼いっぱいに搗くのだという自慢のもので、上下の区別がほとんど分らないほど大きく、それを正太郎は紋付袴で持ってくるのであった。

またある日、今度は千吉がやってきた。自分の仕事場からまっすぐに来たらしく、帆前垂れの裾の方にこまかい竹屑がくっついている。

「親方、すまんけど、助けると思うて手伝うてもらえまいか」

手を合しかねない声でいう。千吉は今では新しい得意もでき、子育ての中で家を建てたり、畑を買ったり、やりくりのうまい女房のおかねは身上を作るのに夢中で、近所づき合いもろくにしない暮し方をしていた。