Japanische Klassiker mit Furigana
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あらしのなか
暴風雨の中
山本 周五郎
Lesen Sie 暴風雨の中 (あらしのなか) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 15.339 Zeichen · 30 Bildschirme
三
彼の顔は蒼く硬ばって、醜く歪んでいた。彼はふところから十手を出し、三之助の肩を(作法どおり)打ちながら云った。
「――佃の三之助、御用だぞ」
十手の古びた朱房が三之助の頬を撫でた。三之助は壁へ背を凭せてあぐらをかきながら男を見あげた。そうして、低く笑った。
「やっぱりおめえは律義なんだな」
「黙れ、もうむだ口はきかせねえぞ」
男は三之助を睨みつけた。
三
「むだ口か、ふっ」三之助は肩を揺った、「それより舟を見て来たらどうだ、おめえの乗って来た舟をよ、その方が大事じゃあねえのか」
男はぎょっとした。彼は十手をふところへ差込み、慌てて隣りの部屋の方へいった。三之助は皮肉な冷笑をうかべながら、男が合羽を衣る音や、廊下から屋根へ出てゆくのを聞いていた。僅かなあいだに、風の勢いは衰えていた。突風はまだ相当に烈しいが、途絶える時間が少しずつ延びてきた。
「おーい」裏の屋根で男の叫ぶのが聞えた、「おーい、……おーい」
三之助は左右の肩を捻った。繩がくいこんで痛いらしい、だが、もがけば繩はさらに緊った。三之助は舌打ちをして、勝手にしろというように、また壁へ凭れかかった。男が戻って来た。