Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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あらしのなか

暴風雨の中

山本 周五郎

Lesen Sie 暴風雨の中 (あらしのなか) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 15.339 Zeichen · 30 Bildschirme

Aozora Bunko

それは風雨に遮られて判然としないが、いかにも懸命な、切迫した声であった。

「お願いよ」娘が絶叫した、「一生のお願いよ、……三ちゃん」

その声はずっと遠のいた。強い力でぐっと引離されでもするように、すっと遠のいて、もういちど聞えた。

「――三ちゃん」

三之助が一人で戻って来た。濡れ鼠のようになって部屋へ戻って来ると、そのままそこへ仰向けに倒れた。

「これでいい」彼は呟いた、「これでいいんだよ、おしげ、……諦めてくんな」

彼は荒く息をしながら、左の腕で顔を掩った。するとその二の腕の内側に、大きな掻き傷が二条できて、血の滲んでいるのが見えた。彼はぐらぐらと頭を揺った、廊下の外で水のはねる音がし、がぶっという声が起こった。続けさまに水がはね、苦しそうに人の喘ぐのが聞えた……三之助は首をもたげた、するとまた水がはねた。彼はとび起きて廊下へ出た、覗いてみると、廊下の西の端に人の手が見えた。その手は危なく戸袋にかかっているが、躯は水の中にあった。三之助は駆けていって、その手を掴んだ。それはおしげというあの娘であった。

「どうしたんだおしげさん、どうして……」

彼は絶句した。