Japanische Klassiker mit Furigana
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つきのせかいたんけんき
月世界探険記
海野 十三
Lesen Sie 月世界探険記 (つきのせかいたんけんき) von 海野 十三 (うんのじゅうざ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 14.351 Zeichen · 29 Bildschirme
出発直前の殺人
彫刻のように立っていたミドリは、このとき右腕をあげて無言で前方を指した。
「ナ、なッ……」
学士は愕いて、ミドリの指す前の草叢を見た。
「呀ッ。……羽沢飛行士が倒れている! これはどうした。ああッ……」
傍へかけよってみると、乗組員の一人である飛行士が白いシャツの胸許のところを真赤に染めて倒れていた。調べてみると、彼は心臓の真上を一発の弾丸で射ぬかれて死んでいた。一体こんなところで誰に撃ち殺されたのだろう?
「……ああ、おしまいだ。折角のあたし達の探険……」
ミドリは悲しげに叫ぶと、ガッカリしたのか、大地の上にヘタヘタと身体を崩した。それは見るも気の毒な気の落としようだった。ミドリの兄は天津百太郎といって、失踪したロケットの操縦士だった。彼女はこんどの探険を企てたのも、恨みをのんで死んだろうと思われる兄の霊を喜ばそうためだった。それだのに羽沢飛行士は壮途を前にして、突然死んでしまった。ミドリの悲しみは、察するだに哀れなことだった。
「……仕方がない。これも神さまのお心かもしれないよ」と艇長はやさしく彼女の肩に手をおいて云った。「残念だが、このたびは中止をしよう」