Japanische Klassiker mit Furigana
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あさのかぜ
朝の風
宮本 百合子
Lesen Sie 朝の風 (あさのかぜ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 15.605 Zeichen · 31 Bildschirme
「ゆうべ」
「来なかったわ」
「――あのひと、田舎へ行って来たって、本当かしら……」
サヨは不安げな表情になった。
「何とか云ってた?」
「云わなさすぎるんですよ、行って来たにしては。勉さんの三周忌だったのに。ひょっとしたら、うっかり忘れてしまったんじゃないのかしら」
みんなの友達であった勉が、真面目で辛酸な若い生涯を終ったとき、あとにのこされた乙女と小さい娘の生活に対しては、親しかった何人かの友達が、誰からも求められてはいないがぼんやりした責任のようなものを感じて来ていた。
勉の年とった親たちは、亡くなった息子の代りに、嫁の乙女を一家の稼ぎ手として離すまいとしていた。乙女はそれが重荷で、娘をつれてマージャン倶楽部へ住込みでつとめたりしていた。気のいいコックの男がいて、それが乙女を散歩にさそっては、一緒になりたいと云っているということが乙女の口から友達たちに話されたりした。亡くなった勉は詩人になろうとしていた。だけれども、気のいい男だというのなら、乙女にとってコックという商売はそんな困った職業だったろうか。
ところがその話はそれなりになって、サヨが今度の家をもったとき、乙女も来て暮したらどうだろうかという案が友子から出された。