Japanische Klassiker mit Furigana
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あさのかぜ
朝の風
宮本 百合子
Lesen Sie 朝の風 (あさのかぜ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 15.605 Zeichen · 31 Bildschirme
非常に深い安らかなよろこびがサヨの心を満していた。そんなよろこびと安心の感情は予想していなかった。それほど大きかった。そのうれしさや安心とはまた別に、さっき雑誌の頁の中に見た乙女の姿がサヨの心の裡にある。
雀の囀りが活々と塀のところに聞えたと思うとやがて、ラジオ体操のレコードがどこかで鳴り出した。ピアノの単純なメロディにつれて「ヨオーイ、始メッ」というあの在り来りのレコードだが、擡げた顔に朝日をうけて凝っとそのピアノのメロディを聴いているうちに、サヨの体は小刻みに震えて、忍びやかな嗚咽がこみあげて来た。
このメロディは、重吉とサヨが結婚して間もなかったころの初々しい朝の目覚めの中へ、どこか遠くから響いて来た単純なメロディであった。
メロディとともにその部屋をふきぬけて、二人の体の上をわたった夏の朝の風の思い出で、サヨは泣けて来るのであった。
今のよろこびに通じるまじりけのないよろこびの思い出のため、サヨは涙をおとした。