Japanische Klassiker mit Furigana
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すだま
木魂
夢野 久作
Lesen Sie 木魂 (すだま) von 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 23.668 Zeichen · 46 Bildschirme
「……シマッタ……」
と彼はその時口の中でつぶやいた。……あれだけ位牌の前で誓ったのに……済まない事をした……と心の中で思っても見た。けれども最早取返しの付かない処まで来ている事に気が付くと、シッカリと奥歯を噛み締めて眼を閉じた。
それから彼は又も、片手をソッと額に当てながら今一度、背後を振り返ってみた。ここまで伝って来た線路の光景と、今まで考え続けて来た事柄を、逆にさかのぼって考え出そうと努力した。あれだけ真剣に誓い固めた約束を、それから一年近くも過ぎ去った今朝に限って、こんなに訳もなく破ってしまったそのそもそもの発端の動機を思い出そうと焦燥ったが、しかし、それはモウ十年も昔の事のように彼の記憶から遠ざかっていて、どこをドンナ風に歩いて来たか……いつの間に帽子を後ろ向きに冠り換えたか……鞄を右手に持ち直したかという事すら考え出すことが出来なかった。ただズット以前の習慣通りに、鞄を持ち換え持ち換え線路を伝って、ここまで来たに違い無い事が推測されるだけであった。…………しかしその代りに、たった今ダシヌケに足の下で笑ったものの正体が彼自身にわかりかけたように思ったので、自分の背後の枕木の一つ一つを念を入れて踏み付けながら引返し初めた。