Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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とうじょうき

東上記

寺田 寅彦

Lesen Sie 東上記 (とうじょうき) von 寺田 寅彦 (てらだとらひこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 8.356 Zeichen · 17 Bildschirme

Aozora Bunko

八月二十六日床を出でて先ず欄干に倚る。空よく晴れて朝風やゝ肌寒く露の小萩のみだれを吹いて葉鶏頭の色鮮やかに穂先おおかた黄ばみたる田面を見渡す。薄霧北の山の根に消えやらず、柿の実撒砂にかちりと音して宿夢拭うがごとくにさめたり。しばらくの別れを握手に告ぐる妻が鬢の後れ毛に風ゆらぎて蚊帳の裾ゆら/\と秋も早や立つめり。台所に杯盤の音、戸口に見送りの人声、はや出立たんと吸物の前にすわれば床の間の三宝に枳殻飾りし親の情先ず有難く、この枳殻誤って足にかけたれば取りかえてよと云う人の情もうれし。盃一順。早く行て船室へ場を取りませねばと立上がれば婢僕親戚上り框に集いて荷物を車夫に渡す。忘れ物はないか。御座りませぬ。そんなら皆さん御機嫌よくも云った積りなれどやゝ夢心地なればたしかならず。玄関を出れば人々も砂利を鳴らしてついて来る。用意の車五輌口々に何やら云えどよくは耳に入らず。から/\と引き出せば後にまた御機嫌ようの声々あまり悪からぬものなり。見返る門柳監獄の壁にかくれて流れる水に漣動く。韋駄天を叱する勢いよく松が端に馳け付くれば旅立つ人見送る人人足船頭ののゝしる声々。