Japanische Klassiker mit Furigana
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とうきょうへちかづくいちじかん
東京へ近づく一時間
宮本 百合子
Lesen Sie 東京へ近づく一時間 (とうきょうへちかづくいちじかん) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 2.889 Zeichen · 6 Bildschirme
落付きの中に不安のこもったそういう一家の主人の気配りが紺足袋でネクタイをつけた温厚な男の質問の口調に現れているのである。
「あっちの景気はどうです?」
膝にまつわりつく娘の子の肩に片手をかけつつ、目はカーキ色の顔に向けて訊いている。
「満州国へ入っちゃ大したことはありません。マアすこし勝手がきくぐらいのもんですね」
二人の間にはそれから満鉄傭人のこまかい等級差別について話がすすんだらしく、カーキ色が、
「二円、三円と一つずつ上って六円までつくからね」
と云った。
「ふーむ、それが大きいですね」
「結局おんなじこってすよ、どこへ行ったって残るだけくれないからね」
「――まったくだ」
大宮を過ると、東武線の茶色の電車が、走っている汽車に見る見る追いぬかれながら、におのある榛の木の間、田圃のむこうを通った。まだ短い麦畑の霜どけにぬかるみながら、腹がけをした電信工夫が新しい電柱を立てようとしている作業が目を掠める。
窓外の景色がすこし活々して来るにつれ、赤いジャケツの娘の子は退屈がまして来るらしく益々父親の膝に体ごとまつわりついて、赤いほッぺたをふくらし、つぎのあたったゴム長の足をくねらせ、じぶくっている。