Japanische Klassiker mit Furigana
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かれぎくのかげ
枯菊の影
寺田 寅彦
Lesen Sie 枯菊の影 (かれぎくのかげ) von 寺田 寅彦 (てらだとらひこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 6.543 Zeichen · 14 Bildschirme
ウトウトこんな事を考えていたが、気がついてみると垣の外ではさっきの子供等がまだ大きな声で歌ったりわめいたりしている。年かさらしいのが何か大将ぶって指揮している。こんなのもおおかた軍人党になるだろうと思って、過ぎたわが小半生の影が垣の外にちらつくように思う。突然向うの家の板塀へ何か打っつけた音がしたと思うと一斉に駆け出してそれきり何処かへ行ってしまった。凧のうなりがブンブンと聞えている。熱は追々高くなるらしい。口が乾いて舌が上顎に貼り付く。少し眠りたいと思うて寝返りをすると、額の氷袋の氷がカチカチと鳴って袋は額をはなれる。まだ傍で針を使うていた妻はそれを当てなおしながら気分を問う。一片の旨い氷を口に入れてもらう。
もう何事も考えまいと思ったが、熱のために乱れた頭にはさっきまで考えていたような事がうるさく附き纏うて来る。そして脳が過敏になっているためか、不断はまるで忘れていたような事まで思い出して来る。自分は子供の時から絵が好きで、美しい絵を見れば欲しい、美しい物を見れば画いてみたい、新聞雑誌の挿画でも何でも彩色してみたい。彩色と云っても絵具は雌黄に藍墨に代赭くらいよりしかなかったが、いつか伯父が東京博覧会の土産に水彩絵具を買って来てくれた時は、嬉しくて幾晩も枕元へ置いて寝て、目が覚めるや否や大急ぎで蓋を