Japanische Klassiker mit Furigana
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くりのはなのさくころ
栗の花の咲くころ
佐左木 俊郎
Lesen Sie 栗の花の咲くころ (くりのはなのさくころ) von 佐左木 俊郎 (ささきとしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 6.440 Zeichen · 14 Bildschirme
何も心配しねえで、自分達だけ、立派になって来う。」
「それより、お父さんさ、酒でも買って来たら?」
美津子は漸く顔を上げて言った。
「酒か? 酒なら呑んで来たばかりだ。酒より話でもする方がいいで。」
嘉三郎はそう言ってとめたが、忠太郎は黙って、そそくさと出て行った。
「お父さん? 本当に悪いことして。」
美津子は又そう言って布団に顔を当てた。
「何も悪いことなどねえで。忠太郎はあれでなかなか偉いところのある奴だ。俺も目をつけていた奴だ。こんなに近くにいてあ、何をしてんのもすぐわかってしまうから、東京さでも行って立派になって来う。この辺なら、俺の名を知っている奴もいるに違えねえが、お前がこんな豚小屋のようなところにいてあ、俺だって気持ちがよくねえからなあ。お前の病気が癒ったらすぐ東京の方さでも行くさ。」
「ここで旅費を稼ぎ溜めてから、お父さんにも相談して、それから東京の方さでも……」
「旅費を稼ぎ溜めるって、何か、仕事があんのか、金なら、百円は少し欠けるけども、持って来てやった。これで、どこへでも、落ち着くんだな。」
父親の嘉三郎はそう言って袂からそこへ金を掴み出した。