Japanische Klassiker mit Furigana
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くりのはな
栗の花
岡本 綺堂
Lesen Sie 栗の花 (くりのはな) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 2.717 Zeichen · 6 Bildschirme
白鳥はどこの巣へ帰ったのか、もう見えなくなりました。起き直って、巻莨を一本すって、その喫殻を水に投げ込むと、恰もそれを追うように一つの白い花がゆらゆらと流れ下って来ました。透してみると、それは栗の花でした。
栗の花アヴォンの河を流れけり
句の善悪は扨措いて、これは実景です。わたしは幾たびか其句を口のうちで繰返しているあいだに、船は元の岸へ戻って来ました。両君は櫂を措いて出ると、私もつづいて出ました。貸船屋の奥には黄い蝋燭が点っています。亭主が出て来て、大きい手の上に船賃をうけ取って、グードナイトと唯一言、ぶっきらぼうに云いました。岸へあがって五六間ゆき過ぎてから振返ると、低い貸船屋も大きい栗の木もみな宵闇のなかに沈んで、河の上が唯うす白く見えるばかりでした。どこかで笛の声が遠くきこえました。ホテルへ帰ると、われわれの部屋にも蝋燭が点してありました。
ホテルの庭にも大きい栗の木があります。いつの間に空模様が変ったのか、夜なかになると雨の音がきこえました。枕もとの蝋燭を再び点して、カアテンの間から窓の外をのぞくと、雨の雫は栗の葉をすべって、白い花が暗いなかにほろほろと落ちていました。