Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
ばいしのつえ
梅颸の杖
吉川 英治
Lesen Sie 梅颸の杖 (ばいしのつえ) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 15.966 Zeichen · 32 Bildschirme
知っているか。知らない者はなかろう。
あのふたりの交情は、もう十数年前からのことで、今日に始まったことじゃないが、梨影という貞淑な妻女もあり、ふたりの子供までありながら、いまだに、岐阜と京都のあいだで絶えず文通し、折には、あの女詩人を気どる老嬢が、わざわざ綺羅をこらして公然と水西荘へ逢いに来る。外でも、詩の会、書の会にことよせて逢い曳きをしているじゃないか。甚しい時には、人前もなく、細香女史の下手な墨竹などへ、山陽ともある者が、麗々とお惚気の画讃を書くことすらある。
気の毒なのは、お人のいい梨影女さ。山陽は、すまして口を拭いているけれど、細香女史があの美貌で、あの名門の娘で、とにかく詩画の才能を持ちながら、三十幾歳かになっても、いまだに嫁がないでいるのが何よりの証拠ではある。由来山陽は、部屋住み時代の放蕩家の通り者だもの、それ位なことはあるのが当然で、無ければ不思議といえる。
――そんな噂、そんな悪罵。
梅は、ひどく心配した。
芸藩の片田舎に、貞節な春水未亡人として暮している彼女には、都会の様子も、複雑な社会人争闘の戦法も、男同士の女よりもつよい嫉視も、反目も、分らなかった。