Japanische Klassiker mit Furigana
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せいかけんざっき
棲霞軒雑記
上村 松園
Lesen Sie 棲霞軒雑記 (せいかけんざっき) von 上村 松園 (うえむらしょうえん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 7.211 Zeichen · 15 Bildschirme
「こりゃ美事どすな」
「いろはよりも大したもんどす」
私と私の母は声をそろえて感歎した。絵かきの私など、その七福神の一つ一つの表情にまで感心したものである。
「父はこれを描くのがたのしみでね」
と、件の男は言うのである。
「こりゃ二度と見られん珍宝なもんやよって、みんなにもみせておやり」
私は母にそう言われて、家の者を集めて覗かせるやら、近所の人たちを集めて、
「何さま不思議なもんや」
そう言って覗かせた。
みんなが見てしまったので私は米粒と豆を紙につつんで、
「ありがとうさんでした。よう見せておくれやした。今日はおかげ様で、ええ目の保養が出来ました」
そうお礼を言って返すと、件の男も、
「よう見て下さいました。父もこのことをきいたら悦ぶでしょう」
そう言ってから、また曰く、
「父の苦心の技をほめて貰って、子として大へん嬉しい。ついてはこの米粒と豆を見ていただいた記念に――先生なにか一つ描いて下さいませんか。父も悦ぶでしょう」
とり出したのが大型の画帳であった。
私は、
「やられた」
と思った。まんまと一杯ひっかかったと思ったが、米粒と豆の技が美事だったのと、父のことを言って嬉しがらせようというその心根に好意がもてたので、その場で――ちょうど秋だったので、一、二枚の紅葉をその画帳にかいてあげた。