Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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たてごし

楯輿

山本 周五郎

Lesen Sie 楯輿 (たてごし) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N1. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N1 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 8.377 Zeichen · 17 Bildschirme

Aozora Bunko

敵が来たら刺しちがえるつもりで、太刀を構えたままじっと戦闘のありさまを見ていた与八郎は、暫くすると愕然たる色をうかべた、なんとも形容しようのないおどろきの色である、……かれは兵たちの戦いぶりを見たのだ、指揮者の命のままに戦っている軍兵の姿を見たのだ。槍組でも抜刀隊でも、兵たちは指揮者の手足の如く縦横に戦っていた、眼の前に鎧武者がいる、それを討てば兜首のてがらだ。敵の一角が隙いた、そこへ突っこめば一番槍かも知れない、好機はついそこにある、功名は手のさきに転げている、だが兵たちは眼もくれなかった。進めと云えば進み退けといえば退いた。全身に闘志は漲り、相貌は悪鬼の如く怒張している、それは戦気そのものだった。しかも「おれが」というけぶりは微塵もない、壮烈をゆくという自負もみえない、生も死もはるかに超えてひたむきに闘う魂、そのたましいだけが烈々たる火となって躍動しているのだ。

「ああ……」与八郎はわれ知らず叫んだ、するとそれに答えるかの如く、もののふの多くはその名さえとどめずに戦場の露と散っている、そう云った長尾勘兵衛の言葉が雷鳴のように大きく耳へよみがえってきた。