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Japanische Klassiker mit Furigana

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えのきものがたり

榎物語

山本 周五郎

Lesen Sie 榎物語 (えのきものがたり) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 33.519 Zeichen · 67 Bildschirme

Aozora Bunko

あたしとあの人とは向き合って坐り、茶の手前をし、僅かながら話もした。お互いが手の届く近さで向き合い、じかに顔と顔を見合せた。しかも二度まで、――そんなに近く二度もお互いを見、話までしたのに、どちらも相手がわからなかった。あたしには国吉ではないかという疑いさえ起こらなかったし、国吉のほうでもそんなことは感じなかったようだ。

「六年、六年もよ」さわはくすっと喉で笑った、「なんのために六年も待ってたの、さわちゃん、あんたはいったいどこの誰を待ってたのよ」

さわは忍び笑いをしたり、肩をすくめたりし、絶えず独り言を呟きながら、泊りをいそぐ客たちや、馬や駕籠の往来する道を、あてどもなくふらふらあるいていった。そして、やがて気がついてみると、いつもの榎のところに、ぼんやり佇んでいた。昏れてしまった晩秋の宵闇の中に、榎はどっしりと黒く、重おもしく、しんと立っており、ときどき梢のほうから、散り残った枯葉が舞い落ちて来た。

「おすげちゃんと健次さんは、一と眼ですぐにお互いがわかったじゃないの」とさわは榎に向って云った、「たった二度か三度会っただけなのに、相手は旅姿で萱笠をかぶったまま、街道を歩いていたのに、それでもわかったじゃないの、あたしたちはどういうわけなの」