Japanische Klassiker mit Furigana
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
Lesen Sie 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 112.073 Zeichen · 223 Bildschirme
井戸は内井戸で、厨のそれとはべつに、道場の支度部屋に付属している。もう二月下旬だし、稽古のあとなので、いつもなら躯を拭くだけだが、思いきって水をかぶった。すると「あら寒そうね」という声がして、戸口からおみやが覗いた。
新八はぎょっとした。
「いま来たのよ、早くあがっていらっしゃいな」
おみやは濃い化粧をした顔で、なにかを暗示するように、嬌めかしく笑った。
「いま着物を持って来てあげるわ」
「よして下さい」と新八は思わず叫んだ。
着物の袂にはあの手紙が入っている。もしお久米のむすび文をみつけられたら、そう思ってつい高い声になった。
「びっくりするわね、どうしていけないの」
「下着が」と新八は吃った、「下着が汚れていて、汗臭いからです」
「いいじゃないの、汗臭いくらいなによ」
おみやはそこで声をひそめ、殆んどみだらな眼つきで新八をみつめながら「新さんのならどんな匂いだってふるいつきたいほど好きだわ」と囁き、にっと笑いかけると、そのまま廊下を向うへ去っていった。
新八は手早く躯を拭いた。みつかったらどうしよう、彼は気もそぞろだった。しかし、着物を持って来たおみやには、変ったようすはなかった。