Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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もみノきはのこった

樅ノ木は残った

山本 周五郎

Lesen Sie 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 112.073 Zeichen · 223 Bildschirme

Aozora Bunko

「ちょっと出ましょう」とおみやは云った、「あたしがあとで兄に云うからいいわ、いま断わって来るから支度をしてらっしゃい」

新八はためらったが、おみやは立って隣りの部屋へゆき、寝ているさわに断わりを云った。

さわはしぶった。良人の又五郎からよほどきびしく云われているらしい、お市までがそばから「父の承諾がなければ」などと、心配そうに口をそえた。おみやは殆んど相手にならず、兄には自分がそう云うから、と云って、こちらへ立って来てしまった。

「あら、支度をしないの」おみやは坐ったままの新八を見て云った、「お屋敷では宿下りは年に二度っきりないのよ、それも日の昏れるまでには帰らなければならないし、兄のところへも寄らなければならないのよ、さあ、早く立ってちょうだい」

おみやは自分で新八の着替えを出し、せきたてて支度をさせた。彼女がなんのために伴れ出そうとしているか、いっしょに出るとどんなことになるか、新八にはよくわかっていた。

――きさまは自分に誓った筈ではないか。

彼は自分に嫌悪を感じた。新八は自分に誓った。もうおみやの誘惑には負けまい、どんなに誘惑されても必ず拒絶しよう。