Japanische Klassiker mit Furigana
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
Lesen Sie 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 112.073 Zeichen · 223 Bildschirme
また次にようすをお知らせする。そして署名は「玄」の一字であった。
甲斐は滝尾となのる女のくだりを読み返し、柿崎みやという本名を、口の中で三度ばかり呟いた。
そのとき、内庭へ伊東七十郎がはいって来た。丸腰で、着物の衿ははだかり、袴も裾がひきずるほど着崩れている。片手をはだけた衿からふところに入れ、片方の手に満開の八重桜の枝を持って、――酔っているのだろう、ふらふらと縁側のほうへ歩みより、「邪魔をしていいですか」と声をかけた。
甲斐は手紙を巻きながら振向いた。七十郎は縁側へあがり、それから部屋へはいって来て、どかっと、あぐらをかいた膝へ、桜の花枝を横たえた。
「久しぶりだ、いつ出て来た」と甲斐が云った。
「酒をもらえませんか」
「私はでかけなければならないんだ」
「雅楽頭へ伺候ですか」七十郎はにっと笑った、「いいですとも、おでかけのあとは独りで飲みますよ」
「謙遜だな」甲斐は鈴を鳴らした。
成瀬久馬が来た。彼も十八歳になり、むろん元服しているし、同年の塩沢丹三郎より背丈も高く、躰格もがっちりしていた。甲斐が酒の支度を命ずると、七十郎は桜の枝を渡しながら、大きくなったな、と云った。