Japanische Klassiker mit Furigana
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
Lesen Sie 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 112.073 Zeichen · 223 Bildschirme
「事実なら有難いな」
「ほう、有難いですか」
「有難いね」甲斐は鈴を取って鳴らした、「七十郎などと違って、やしなわなければならない家従が多いから、加増はなにより有難いよ」
そして甲斐は立ちあがった。
「原田甲斐、原田甲斐か」と七十郎は冷笑した、「貴方にはこれまでかなわないところがあった、しかしいまは老獪だ、老獪という以外には評しようがなくなった」
「では、また会おう」
「貴方とですか」こう云って七十郎は唇を歪め、頭を横に振った、「いや、もう会いますまい、義兄が国老になれば小野(領地)にいてやらなければならない、暇もないが貴方に会う興味もなくなりましたよ」
「それは残念だ」
「しかし忘れないで下さい、私には眼もあるし耳もある、七十郎はどこにいても、眼と耳が健在だということを忘れないで下さい」
そして汁椀に注いだ酒を呷り、貴方の健康を祈ります、と云ったが、そこでふと思いだしたように、原田さんと呼びかけた。
「もう一つ云うことを忘れていました」
甲斐は襖のところで振返った。
「まだ貴方は知らないと思うのだが、塩沢丹三郎が鬼役(毒見)を願い出ましたよ」
甲斐は黙っていた。