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Japanische Klassiker mit Furigana

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もみノきはのこった

樅ノ木は残った

山本 周五郎

Lesen Sie 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 112.073 Zeichen · 223 Bildschirme

Aozora Bunko

宇乃にもそういう気持がわかるようになったであろう、まだ熟さない青い果物に、おまえは手を出したのだ、それはもう少し待てば熟して、おまえの手にはいったのだ、そう思わないか」

丹三郎は顔をあげてはっきりと云った。

「はい、そうは思いません」

甲斐は不審げに彼を見た。

丹三郎の顔は、血のけを失って白く、仮面のように硬ばっていた。彼はまともに甲斐を見あげながら、私はそうは思いません、とはっきり云った。

「どうしてだ、そう思わないという、理由があるのか」

「ございます」

「どういうことだ」

「宇乃どのには、もう心に想う人がいたのです」

甲斐はじっと丹三郎をみつめた。

「私にはわかったのです」と丹三郎は云った、「それがわかったので、黙っていることができなくなったものですから」

「待て、それは誰だ」と甲斐が遮った。

丹三郎は甲斐の眼をみつめた。その中でなにか燃えてでもいるような、激しい眼つきであった。それからその眼をそらして、申上げられません、と云った。

「丹三郎」と甲斐が云った。

「いいえ、申上げることはできません」

そして彼はそこへ両手をついた。

甲斐は黙って、思いがけない衝動を受けたもののように、やや茫然と、丹三郎の姿を見まもっていた。