Japanische Klassiker mit Furigana
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
Lesen Sie 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 112.073 Zeichen · 223 Bildschirme
「それももう終るだろう」と甲斐が云った。
律は泣きだした。両手で顔を掩って、静かに、弱よわしく、いかにもせつなそうに嗚咽した。顔を掩っている手の、白くてしなやかに長い、きれいな指が、絶望とかなしみを語るかのように、みじめにふるえていた。
「どうしてもだめなのでしょうか」と律が云った。
「泣かないでくれ、二人は別れるほうがいいのだ、別れるほうがいいということは、おまえにもよくわかっているはずだ」
「わたくし自分が良い妻だったとは思いませんわ」
「そんなことはべつだ」
「わがままでむら気で、求めることが強くて、あなたの負担にばかりなっていましたわ、でもそれはどうにもしようのないことだったのです」
「わかっている」
「わたくしいつもあなたが欲しかったんです、あなたのぜんぶを、残らず、いつも自分のものにしておきたかったんです」と律が云った、「それなのにあなたは、いつもわたくしから遠いところにいらっしゃる、寝屋をともにして、からだは手で触れているのに、あなた御自身はそこにいない、からだがそこにあるだけで、あなたはいつもいないんです、わたくしは本当のあなたという方に、いちども触れたことがありませんでした」