Japanische Klassiker mit Furigana
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
Lesen Sie 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 112.073 Zeichen · 223 Bildschirme
「殿さまは此処へはまだ戻ってござらぬ」と与五兵衛は云った、「だがなんで心配するだ」
「ふじこは、おらが久兵衛の嫁にもらうですよ」
「心配するな」
「殿さまのことは心配はしねえです」と文造が云った、「けれども久兵衛が血まなことなってるで、久兵衛はあんな人間だし、よそへ出ていたで殿さまのことをよく知らねえだし、それでもし、まちげえでもしでかすでねえかと思ったもんですから」
「あのかぼねやみが」と与五兵衛が呟いた、それから平助に向かって云った、「久兵衛は小屋か」
平助はゆっくりと首を振った。
「心配するな」と与五兵衛が云った、「殿さまは大丈夫だ、うっちゃっとけ」
「久兵衛は鉄砲を持って出たですよ」と文造が云った。
与五兵衛は平助をにらんだ、平助は小さい躯をもっと小さくちぢめ、口の中でなにかぶつぶつと云った。与五兵衛は立ちあがって、「すぐ捜しにゆけ」と云った、「待て、いま鉄砲を出してやる、あのかぼねやみめが、射ち殺してくれるぞ」
そして、彼は納戸へはいっていった。平助と文造はもそもそと蓑を着、頭巾をかぶりながら、低い声でなにか囁きあった。まもなく、与五兵衛が納戸から出て来た。