Japanische Klassiker mit Furigana
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
Lesen Sie 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 112.073 Zeichen · 223 Bildschirme
「まちがい、――ああ、それはいかがですかな」と喜兵衛はまた苦笑した、「山へこもるとまるで野人のように変ってしまわれますし、私どもはお側にいませんのでよくわかりません、昔からふしぎなくらい女には潔癖な方ですが、まちがいがないかどうかということは、いかがでございますか」
「わからない男だ」と周防は嘆息して云った、「船岡にはわからないところがある、どこということはないが、ふとすると心がつかみにくくなる、あの年でそんな女どもにつきまとわれて、それを伴れてまわる、などという気持もまるでわからない」
「私は館へ帰りたいのですが」と喜兵衛が云った。
「おれは船岡に会わなければならない、古内のことはおれから話しておこう」
喜兵衛は「お願い申します」と云って去った。
甲斐が戻って来たのは、午後三時すぎたころであった。――そのまえに、周防は小屋を出てゆき、山の尾根を歩いていた。風のない、暖かな一日で、陽に蒸された枯草が、溶けて土に浸みこむ斑雪とともに、あまく匂っていた。枯木林から、小鳥の群が、騒がしく鳴きながら、小砂利を投げるように落ちていった。すると、遠いどこかで、樹を伐る斧の音が、こだましながら聞えた。