Japanische Klassiker mit Furigana
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
Lesen Sie 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 112.073 Zeichen · 223 Bildschirme
「殿さまにこれ持って来ただ」とふじこが云い、三人はそれぞれ、手籠や角樽や、重箱の包みをそこへ並べた。
「もうすぐ与五が来るぞ」と甲斐が云った。
「きたっていいですよ」ときよきが云った、「怒りだすまえにかじりついてやるだ」
「かじりつくって」
「あの爺さまは女に捉まると萎えてしまって、怒る精もなくなっちまうだ」
「声も出せなくなるだ」とふじこが云った、「女に捉まると手足をわんざらくっさらさして、ばかがおこったみたようになるだ」
「そしていきすじひっぱって逃げだすだ」
娘たちは声をあげて笑った。
甲斐はつくろい終った弓を取って、きっきっと三度ばかり撓めてみ、それをうしろの板壁に立てかけた。娘たちは互いにわけもなくはしゃぎながら、甲斐の前に古びた毛氈をひろげ、重詰を並べたり、手籠から燗鍋や盃や箸などを取出して、手まめに酒の支度をした。
「ふじこは虚空蔵から来たのか」と甲斐が訊いた。
「おら小坂にいるです」とふじこが答えた、「小坂の源十のとこに、五日まえから泊っているです、殿さまはまだ御存じないでしょう、これが源十の娘のなをこです」
なをこと呼ばれた娘は、赤くなって頭をさげた。