Japanische Klassiker mit Furigana
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
Lesen Sie 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 112.073 Zeichen · 223 Bildschirme
の通路に当る、山つきの低地を見やった。
くびじろは阿武隈川を渡ると、すぐ正覚寺(山)から甚次郎(山)へぬけるか、谷地をまわって山にはいり北郷村の丘陵へ向かうか、どちらかの通路をとるのが、いつもの例であった。こんどは谷地を川上のほうへいったというので、いま甲斐の見張っている場所なら、決して見うしなう心配はないのであった。
空が明るくなるにつれて、雪の降りかたがまた強くなった。――ぐあいが悪いな、と甲斐は空を見あげた。
眼をそばめ、唇をむすんだまま上へあげ、どこかに雲の切れ目はないかと、ぐるっと眺めまわした。すると深く皺のよった額に、雪帽子をすべって粉雪が降りかかった。
甲斐は手をあげて、睫にかかった雪を払おうとしたが、ふと、その動作を止めて息をのんだ。視野の端に、なにか動くものの姿を認めたからである。彼はそのままの姿勢で、極めて静かにそっちへ眼を向けた。
二段ばかり先の、枯木林の中から、すっと一頭の鹿が出て来た。粉雪のとばりのかなたに、それはなんの物音もさせず、幻のようにあらわれ、そこでじっと立停っていた。
――くびじろだ。
とうとう掴んだ、と甲斐は思った。