Japanische Klassiker mit Furigana
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きをあいするこころ
樹を愛する心
豊島 与志雄
Lesen Sie 樹を愛する心 (きをあいするこころ) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 2.805 Zeichen · 6 Bildschirme
平素から病身で弱いのに、気分だけ張りきって万事を一人で引受けていて、いつも倒れるまでは平然と笑ってる彼女だった。
八月の或る夕方、桃の幹を、地上一間半ぐらいのところで、私は鋸で切った。その辺はまだ生きていそうで、芽を出しはすまいかと思ったのである。が、幹はすっかり枯れていた。
八月の末、妻は病院で安らかに永眠した。
其後、彼女の写真を調べていると、庭の桃の木によりかかって立ってるのと、その根本に屈んでるのと、二つのものが、私の心を打った。そんな写真があったのを、私は忘れてしまっていたのだ。写真に見入ると、それは健康な晴れやかな彼女ではなくて、病相の弱々しい淋しい彼女である。
いろいろな点で、その桃の木に似た彼女だった。
今私は別の家に住んでいる。今度の家敷には種々の大きな木がある。常緑樹もあれば落葉樹もある。私は始終それらを眺めている。そして、樹を愛する心が次第に深まってくるのを覚ゆる。この心、言葉にはつくし難いが、或る神聖なるものと繋りを持っていて、私の内心に力と光とを与える。
市内本郷千駄木町の一部に、太田の池という幽邃な大池があった。太田道灌の血を伝えてる太田子爵の所有地なので、俗に太田の池と呼ばれたのである。