Japanische Klassiker mit Furigana
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そり
橇
黒島 伝治
Lesen Sie 橇 (そり) von 黒島 伝治 (くろしまでんじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.663 Zeichen · 24 Bildschirme
さきの男は、なお雪の上を馳せていた。雪は深かった。膝頭まで脚がずりこんでいた。それを無理やりに、両手であがきながら、足をかわしていた。
その男は、悲鳴をあげ、罵った。
イワンは、それ以上見ていられなかった。やりきれないことだ。だが無情に殺してしまうだろう。彼は馬の方へむき直った。と、その時、後方で、豆がはぜるような発射の音がした。しかし、彼は、あとへ振りかえらなかった。それに堪えなかったのだ。
「日本人って奴は、まるで狂犬だ。馬鹿な奴だ!」
八
馭者達は、兵士がおりると、ゆるゆる後方へ引っかえした。皆な商人にだまされたことを腹立てていた。ロシア人を殺させるために、日本人を運んできてやったのだ。そして彼等はロシア人だ!
「人をぺてんにかけやがった! 畜生!」
彼等は、暫らく行くと、急に速力を早めた。そして最大の速力で、銃弾の射程距離外に出てしまった。
そこで、つるすことを禁じられていた鈴をポケットから出して馬につけ、のんきに、快く橇を駆った。
今までポケットで休んでいた鈴は、さわやかに、馬の背でリンリン鳴った。
馬は、鼻から蒸気を吐いた。そして、はてしない雪の曠野を、遠くへ走り去った。