Japanische Klassiker mit Furigana
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くし
櫛
小川 未明
Lesen Sie 櫛 (くし) von 小川 未明 (おがわみめい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 1.337 Zeichen · 3 Bildschirme
町から少し離て家根が処々に見える村だ。空は暗く曇っていた。お島という病婦が織っている機の音が聞える。その家の前に鮮かな紫陽花が咲いていて、小さな低い窓が見える。途の上に、二人の女房が立って話をしている。
「この頃は悪い風邪が流行ますそうですよ。」
「そうだそうですよ、骨の節々が痛むんですって。」
陰気な、力なげな機の音がギイーシャン、コトン! と聞えて来る。全くこの時風が死んだ。また降り出しそうな空には、雲脚が乱れていた。
「お島さんの顔色は善くありませんね。」と一人の女房が眉を顰めた。
「産れるのかも知れませんよ。」と一人がいう。
「そうかも知れない、ああ顔色が悪くちゃ……。」
「吐瀉ぽいといっていたから……。」
二人の女が話をしている処へ、頭髪が沢山で、重々しそうに鍋でも被っているように見える、目尻の垂れ下った、鯰の目附に似ている神経質じみた脊の低い、紺ぽい木綿衣物を着た女が、横合から出て来た。二人はこの女を見るとぎょっとして口を噤んだ。
「まった降りだ。」と鍋を被ったような女が、重たらしい調子でいう。その声がまたとなく陰気だ。
「悪いお天気で困ります。」