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Japanische Klassiker mit Furigana

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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

Lesen Sie 次郎物語 (じろうものがたり) von 下村 湖人 (しもむらこじん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 117.781 Zeichen · 235 Bildschirme

Aozora Bunko

飛行機でも船でも、その方向を転ずるためには、必ずその胴体を傾ける。そしてその方向転換が急角度であればあるほど、その傾きも大きいのである。次郎が、これまで外に求めていたものを内に求めるようになるために、甚しく心の平衡を失ったのは、むしろ当然だったといわなければはるまい。その意味で、私は、彼の自己嫌悪が自己嫌悪に終らず、その失われた心の平衡が、彼自身を転覆させるほど甚しいものでなかったことを、むしろ彼のために祝福してやりたいとさえ思うのである。

だが、この場合にも、われわれは、彼が彼自身の力のみで彼の生命を健全に保つことが出来たと思ってはならない。愛の支えは、いかほど独立不羈になろうとする生命にとっても必要なのである。愛は、愛を拒もうとするものにこそ、最も聰明に与えられなければならないのだ。

では、次郎に対してこの役割を果したものは誰だったか。それは、もはや、乳母や、父や、正木老夫婦ではなかった。というのは、彼らのうちのあるものは、それに堪えうるだけの聰明さを十分に持ちあわせていたとはいえ、次郎にとっては、あまりにも身近な相手であり、そして、彼らの愛に溺れることを、彼自身強いて拒もうとしていた相手だったからである。