Japanische Klassiker mit Furigana
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うたのうるおい
歌の潤い
伊藤 左千夫
Lesen Sie 歌の潤い (うたのうるおい) von 伊藤 左千夫 (いとうさちお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 4.665 Zeichen · 10 Bildschirme
従来石原君の歌の多くは、意味の複雑な具象の鮮明な歌であった。従て潤いがあるというような歌は少なかった。
それが今度の歌は、全く面目を異にして居るのである。予の最も好きな淡雅な味いと情調の潤いとが、無雑作な自然な語句の上に現われて居るのである。『思ひ出』の十首は殊に単純で平淡である。何等の巧みもなく、少しも六つかしい意味もなく、ただすらすらと旅情の追懐を歌って居る。こういう歌を大抵の人は、平凡である、稀薄である、素湯を飲むようであると云うのであるが、その淡然たる声調の上に何処ともなく、情緒のにじみが潤い出て居る。少しもこねかえしがないから一読純粋な清浄な感情が味われる。
あらっぽい刺撃の強い趣味の歌とは全くその味いを異にしてるのであるから、読者の方でもこういう歌を味おうとするには、気を静め心を平かにして、最も微細な感能の働きに待たねばならない。
十首の内取立ててどの歌が良いとも云えない。十首の連作を通しての上に、物になずむ親しみの情の淡い気持が、油然として湛うてる。思うに作者も想の動くままに詠み去って、その表現にそういう自覚があった訳ではなかろう。