Japanische Klassiker mit Furigana
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しょうたい
正体
山本 周五郎
Lesen Sie 正体 (しょうたい) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 7.312 Zeichen · 15 Bildschirme
それは八木良太だった。
「津川か、よう来たな」
「杉田はどうした」
「あかん、十時半だった、あとから電報したんやが見なかったやろ」
「うん、『燕』で来たから、そうかやっぱり駄目だったか」
津川は歩廊で見た幻覚を思い出してぎゅんと緊めつけられるような息苦しさを感じた。
「いまどこや」
「野村屋にいる」
「すぐこっちへ来んか」
津川はちょっと返辞に困ったが、
「ゆうべ徹夜の仕事をしたあとでひどく疲れているんだ、どうせ間に合わなかったのならひと休みしてから行こう」
「さよか、じゃあとにかく晩くにでも来いよ、今夜はお通夜やよってな、待ってるぜ」
電話を切ると、顔なじみの老主人に案内されて津川は二階の奥まった部屋へ通った、しかしひと眼部屋のようすを見ると彼はどこかもっと明るいところへ換てくれと云って、表に面して増築したばかりの新しいほうへ移った。――さきの部屋の壁には、……正確に云うと東側の壁の腰紙の一部には、かつて彼の書きつけた万歳という字が遺っているはずである、それを書いた六年まえのある夜の情景は、いまの津川には強すぎる呵責なのだ。
風呂から出るとおべ子が夕食を運んできた。