Japanische Klassiker mit Furigana
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しょうたい
正体
山本 周五郎
Lesen Sie 正体 (しょうたい) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 7.312 Zeichen · 15 Bildschirme
八木良太は見ていく側からそんなことを云ったが、いまの津川には画の価値はどっちでもよかったのだ。
扉が開いて佐知子が入って来た、それは津川にはすぐ分った。
「いらっしゃいまし」
津川が振返ると、こっちの眼を正しく見ながら佐知子は丁寧に腰をかがめた。彼女は五年まえに比べるとひどく肉付も良くなり、頬などは今度のことで疲れが出ているのであろうのに娘のように艶やかで張り切っていた。
「わざわざ、御遠方のところをおそれいりました、お知らせは出すまいと存じましたのですけど、八木さんが出すほうがよいとおっしゃいますのでお知らせ申しました」
「あなたもたいへんだったでしょう」
「はあ、ありがとう存じます」
佐知子のようすは津川を驚かすにじゅうぶんであった。
彼女の表情には微塵も動揺がないのだ、龍助の死を悲しむ色もなく、津川に会うことの感動もない、そうかと云ってべつにとり澄ましているとか仮面を冠っているわけではなく、一種の近寄りがたさ、見透しのつかぬ模糊とした精気とでもいいたいようなものが、彼女の全身を包んでいるのだ。
佐知子は挨拶だけすると、向うで読経が始まるから来てくれと云って静かに去った。