Japanische Klassiker mit Furigana
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しょうがつのおもいで
正月の思い出
岡本 綺堂
Lesen Sie 正月の思い出 (しょうがつのおもいで) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 2.019 Zeichen · 5 Bildschirme
途中葬列を廃さないのがその当時の習慣であるから、私たちは番町から青山まで徒歩で送って行く。新年早々であるから、碌々に会葬者もあるまいと予期していたが、それでも近所の人々その他を合わせて五、六十人が送ってくれた。
旧冬以来、幸いに日和つづきであったが、その日も快晴で、朝からそよとの風も吹かない。前にもいう通り、戦捷の新年である。しかもこの好天気であるから、市中の賑わいはまた格別で、表通りには年始まわりの人々が袖をつらねて往来する。家々の国旗、殊にこの春は新調したのが多いとみえて、旗の色がみな新しく鮮やかであるのも、新年の町を明るく華やかに彩っていた。松飾りも例年よりは張り込んだのが多く、緑のアーチに「祝戦捷」などの文字も見えた。
交通の取締が厳重でないので、往来で紙鳶をあげている子供、羽根をついている娘、これも例年よりは威勢よく見える。取りわけて例年より多いのは酔っ払いで、「唐の大将あやまらせ」などと呶鳴って通るのもある。
青々と晴れた大空の下に、この新年の絵巻が展げられている。その混雑の間を潜りぬけて、私たちは亡き人の柩を送って行くのである。世間の春にくらべて、私たちの春はあまりに寂しかった。