Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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はぐるま

歯車

芥川 竜之介

Lesen Sie 歯車 (はぐるま) von Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 25.267 Zeichen · 52 Bildschirme

Aozora Bunko

電話は何度返事をしても、唯何か曖昧な言葉を繰り返して伝えるばかりだった。が、それはともかくもモオルと聞えたのに違いなかった。僕はとうとう電話を離れ、もう一度部屋の中を歩き出した。しかしモオルと云う言葉だけは妙に気になってならなかった。

「モオル――Mole……」

モオルは鼠と云う英語だった。この聯想も僕には愉快ではなかった。が、僕は二三秒の後、Mole を la mort に綴り直した。ラ・モオルは、――死と云う仏蘭西語は忽ち僕を不安にした。死は姉の夫に迫っていたように僕にも迫っているらしかった。けれども僕は不安の中にも何か可笑しさを感じていた。のみならずいつか微笑していた。この可笑しさは何の為に起るか?――それは僕自身にもわからなかった。僕は久しぶりに鏡の前に立ち、まともに僕の影と向い合った。僕の影も勿論微笑していた。僕はこの影を見つめているうちに第二の僕のことを思い出した。第二の僕、――独逸人の所謂 Doppel gaenger は仕合せにも僕自身に見えたことはなかった。しかし亜米利加の映画俳優になったK君の夫人は第二の僕を帝劇の廊下に見かけていた。