Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

ja-reading.com

Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.

しのぜんご

死の前後

豊島 与志雄

Lesen Sie 死の前後 (しのぜんご) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 17.273 Zeichen · 35 Bildschirme

Aozora Bunko

坪井も杯をとった。そうして酒をのむのはばかばかしかったが、ばかばかしいことは、一番ほかに仕様のないことかも知れなかった。そして彼はまた考えこんだ。おばさんの死の前後のことをもっとくわしく聞きたかったが、蔦子はもうそんなことに心を向けたくないらしかった。生きてる者の、生きてる間だけのこと……そういうところに彼女の気持はあった。それなのに、彼女の真剣に生きることを何が妨げているのか。坪井はまた考えこんだ。

「考えちゃいけないわ。」

「考えやしないよ。」

そして坪井は立上ったのだった。

「帰るの。」

「うむ。」

蔦子は別に引止めなかった。坪井は一人で、薄ら寒い春先の夜更の街路を歩いていった。俺がもし金をもっていたら、蔦子なんかには眼もくれないかも知れないと、そんなことが考えられるのだった。もしひどくせっぱつまったら、彼女を殺すかも知れないと、そんなことも考えられるのだった。

それから一ヶ月ばかりの間――その頃坪井は島村陽一に一寸逢ったのだが――坪井は薄暗い憂欝のなかに浸りこむと共に、蔦子からも次第に遠のいてゆくようだったが……。

或る日、坪井は会社で、また社長の依田賢造から呼ばれた。