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Japanische Klassiker mit Furigana

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しのぜんご

死の前後

豊島 与志雄

Lesen Sie 死の前後 (しのぜんご) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 17.273 Zeichen · 35 Bildschirme

Aozora Bunko

既往症は動脈硬化、脳溢血による急死……。恐らく夜中に軽い苦悶を覚えて、水を飲みに立っていった時、急激な脳溢血で倒れたものであろう。もう六十歳になっていた。「死因は明かだが、そうした脳溢血を招いた間接の原因が何かあるかも知れない……、」と田中は島村に囁いた。彼女の縁故としては、東京には本所で小さな折箱屋をやってる遠縁の者と、下谷で芸奴になってる姪の娘きりだった。それらの人たちを呼んで、島村の家で死体を棺に納め、一通りの読経をし、遺骨を郷里の新潟県下に運ぶことになった。

知人の紹介で島村のところに世話になってる三ヶ年余の間、おしげは本所の折箱屋とあまり往き来をしなかった。その代り、時々姪の娘を訪れていた。芸者だからお邸に出入りさしては悪いといって、一度も向うから来さしたことはなかったが、月に一二度くらいはどちらからともなく電話で話し、三月に一度くらいはこちらからたずねていき、小遣や平素着を貰ってくるのだった。ほんとうに孝行なやさしい娘だといって、女中にはしじゅう噂をしていた。その娘に頼りきってる風だった。実の親子と同様な気持でいたらしく、いまにあの娘と家を持つのだと、それが理想でもあり目的でもあるらしかった。