Japanische Klassiker mit Furigana
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しのふくしゅう
死の復讐
国枝 史郎
Lesen Sie 死の復讐 (しのふくしゅう) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 7.539 Zeichen · 16 Bildschirme
ドン河の水は月光に射られて銀箔のように白く輝き、曠野は一面に露でも下りたように鼠色に朦朧と光っている。
ぽかぽかと暖い夜の空気……甘く鼻を搏つ野草の匂……雌雄の夜烏の睦言……。
南露西亜の夜の風情は何んと美しくあることよ! 併し美しいこの光景も若い放浪者には無価値と見えて目を上げて野面を見ようともしない。彼は疲労れた足どりでノロノロと歩くばかりである。
どこまで歩くつもりだろう。どこから歩いて来たのだろう。夜中彷徨うつもりかしら。大分疲労れているらしいのに。もし泊まろうと思うなら哥薩克の家を叩くがいい。彼等は喜んで泊めるだろう。それが彼等の道徳なのだ。
しかし若者は部落まで行って家を叩こうともしなかった。今にも倒れそうな足どりで彼はノロノロと歩いて行く。
哥薩克の部落を通り過ぎて涯も知れない曠野の姿が若者の眼前にあらわれた時には、流石に彼も心細くなったか、小丘の上に佇んで茫然とあたりを見廻わした。
丘の真下には僅の耕地と三軒の草屋とが立っていたが十六夜の月に照らされてさも懐し気に見えている。
若者はじっと考えた。
それから丘を下りたのである。
一軒の家の前に立った時、どうやら家内が賑かで饗宴でも行われているらしいので彼は黙って立ち去った。