Japanische Klassiker mit Furigana
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しかばねをくうおとこ
死屍を食う男
葉山 嘉樹
Lesen Sie 死屍を食う男 (しかばねをくうおとこ) von 葉山 嘉樹 (はやまよしき) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 7.482 Zeichen · 16 Bildschirme
そのうえ、なんらの事件のない時でさえ彼は、考え込んでばかりいて、影の薄い印象を人に与えていた。だが、彼はベッドに入ると直ぐに眠った。小さな鼾さえかいて。
安岡は、ふだん臆病そうに見える深谷が、グウグウ眠るのに腹を立てながら、十一時にもなれば眠りに陥ることができた。
セコチャンが溺死して、一週間目の晩であった。安岡はガサガサと寝返りを三時間も打ち続けたあげく、眠りかけていた。が、まだ完全には眠ってしまわないで、夢の初めか、現の終わりかの幻を見ていると、フト彼の顔の辺りに何かを感じた。彼の鋭くとがった神経は針でも通されたように、彼を冷たい沼の水のような現実に立ち返らせた。が、彼は盗棒に忍び込まれた娘のように、本能的に息を殺しただけであった。
やがて、電燈のスイッチがパチッと鳴ると同時に部屋が明るくなった。深谷が寝台から下りてスリッパを履いて、便所に行くらしく出て行った。
安岡の眼は冴えた。彼は、何を自分の顔の辺りに感じたかを考え始めた。
――人の息だった。体温だった。だが、この部屋には深谷と自分とだけしかいない。深谷がおれの寝息をうかがうわけがない。