Japanische Klassiker mit Furigana
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ししゃをわらう
死者を嗤う
菊池 寛
Lesen Sie 死者を嗤う (ししゃをわらう) von 菊池 寛 (きくちかん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 4.234 Zeichen · 9 Bildschirme
」
「夜通し、這入っていると、凍え死に死ぬのですよ、もう水の中が冷いですからね。」
と、啓吉の直ぐ横に居る洋服を着た男と、啓吉の前に、川中を覗き込んでいる男とが、話している。
すると突然、橋の上の群衆や、岸に近い群衆が、
「わあ!」と、大声を揚げた。
「ああとうとう、引掛けやがった。」と所々で同じような声が起った。人夫が、先に鉤の附いた竿で、屍体の衣類をでも、引掛けたらしい。
「やあ! 女だ。」とまた群衆は叫んだ。橋桁に、足溜を得た人夫は、屍体を手際よく水上に持ち上げようとしているらしい。
群衆は、自分達の好奇心が、満足し得る域境に達したと見え、以前よりも、大声を立てながら騒いでいる。が、啓吉には、水面に上っている屍体は、まだ少しも見えなかった。
しかし、彼は人間、しかもその生前には、その身嗜みのために、絶えざる考慮を払ったに違いない、女性の身体が、ゆで蛸か何かのように、鉤に釣るされて、公衆の面前、しかも何等の同情もなく、軽佻な好奇心ばかりで、動いている群衆の面前で、引揚げられると云うことは、その屍体に対する侮辱のみではなく、人間全体に対する、酷い侮辱であるように思われて、憤りと悲しみの混じったある感懐に、囚われずにはいられなかったのである。