Japanische Klassiker mit Furigana
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のこされたるえど
残されたる江戸
柴田 流星
Lesen Sie 残されたる江戸 (のこされたるえど) von 柴田 流星 (しばたりゅうせい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 41.677 Zeichen · 80 Bildschirme
声にそそられて昨日うけたばかりの袷をまた典じ来て夕餉の膳を賑わすほどの者、今日も江戸ッ児は昔に変らぬのが、さても情ないは仙台鮪が河岸にのぼる日もあって、それ以来初松魚の有難味頓と下り果てた為体、竜も雲を得ざれば天に及ばず、時なればこれとても是非ないことかな。
しかはあれども、松魚は元より男の魚、ピンと跳ねた姿にすッきりした縞目の着もの、美しきは上べばかりでなく、おろした身のさらりと綺麗で、盃の口に決してしつこからず、箸にする一片の肉にも、死して死せざる筋の動き、身は寸断に切り刻まれても、魂は遂に滅びざる江戸ッ児の性根をそのままなる、ここに財物を抛ってもの値打ちはあるのだ。
仙台鮪は黒味なものと心得、肉さえ赤ければ近海ものだと喜んでいる御仁にはお解りになるまいが、窮しては鱒のおろしたをも身代りにして鮪だと胡麻化す鮨屋が、強ち屋台店ばかりでなくなってきた世に、初松魚の賞美さるるも、既にここらが最期だろうとの心配は、先ずは取越し苦労で、江戸趣味の残る限り、江戸ッ児の子孫の続く間は、吾儕より初松魚を除くことはあるまいと信ずる。吾儕より初松魚を忘れ去ることはなかろうと言いきれる。