Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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のこされたるえど

残されたる江戸

柴田 流星

Lesen Sie 残されたる江戸 (のこされたるえど) von 柴田 流星 (しばたりゅうせい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 41.677 Zeichen · 80 Bildschirme

Aozora Bunko

八百善料理

某県選出衆議院議員何誰と恐ろしく厳めしい名刺を出して、新橋に指おりの大料理店に上り込み、お定りの半会席を一円にまけとけなぞと遠慮会釈ものう御意遊ばす代議士殿のござる世に、八百善料理の粋を紹介しても、真に首肯きたもうお方の果して幾人を数え得ることやら、実は少々心細き限りではあるが、こうでもない、ああでもないの食道楽の末、いよいよという時が来たら山谷にここの板前を吟味したまえ。

浅草詣での帰るさ、界隈の料理では腹の虫が承知せぬちょう食道楽の一人、さるは八百善にてと態々歩を抂げ、座敷へ通っての注文に「何かさっぱりしたもので茶漬を!」との申しつけ、やがて出されたは黒塗りの見事な膳部に誂えの品々、別に鉢植えの茄子に花鋏一挺が添えてある。

食道楽近頃の希望を満足して先ず高麗焼の小皿に盛られた浸しものを弄味し、更には鋏して鉢植えの茄子をちぎり、大方はそれと察して一ト口して見ると、案ずる如くに頃あいの漬き加減。さて食事をおえてこれで勘定をと十円紙幣一枚を投げ出すに、待てど暮らせど釣銭を持って来ず、如何な八百善でも浸しものに鉢植えの漬茄子で十円はとて、段々に糺して見ると、亭主自ら出て来て云々の説明、いわれを聞いては成程と大通も赤面して引きさがったとか。